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投了について [囲碁]

1ヶ月以上前に、某HPで議論になったことがあるテーマに、「プロ棋士の投了を認めるべきか?」というのがあった。当時からあっためていた見解を述べたい。(奥さんにHP荒らしと批判されるので自粛してました。こういうことを自由に長文で書きたい、と思ったのがブログをはじめた要因のひとつ)

「認められない」と主張した人の理由は以下の通りであると私は理解している。
①プロ棋士は金をもらって対局しているのに、観戦するファンの視点に立つべき。特に海外で行なわれるタイトル戦は、海外のファンに目をむけてもらう、という趣旨に反している。
②棋譜が汚れないうちに投了するのが美学である,なんていう意識こそが最近の日本のプロが韓国などに遅れをとっている大きな原因である。
※もしかしたら他に理由があるかもしれないが私が認識したのは以上2つ。

この意見をみてから、投了を認めても認めなくてもどっちでもいいや派だった私は、投了容認派であることを自覚した。以下、その根拠。

①結果よりもプロセス
プロなんだから、対局料に見合った魅せる碁を!というのは正論だが、だからと言って投了禁止は筋が違う気がする。投了したことが問題ではなくて、投了するような碁を打ったことを問題にすべきで、ポッキリ逝ってしまったものをファンの為に、とか無駄に頑張っても少なくとも私はファンとして喜ばない。

②海外タイトル戦開催の意義?
海外のファンへの対応について。海外のタイトル戦は、単純にA新聞が何年記念でいったからY新聞もとか、関係者がタイトル戦にかこつけて海外にいきたいだけで、「海外のファンに目をむけてもらう」というのは名目だけのような気がする。(あくまで、私の個人的見解)また、海外のファンに目を向けてもらうのは、ネットの時代なんだし、もっと色々な情報をWEBで他国語で発信するとかの方が意味があるとおもう。

③タイトル戦における戦略
七番勝負等の番碁において、プロは「ファンに魅せる碁」だけでなく、「勝利」という結果も求められる。野球でいう「捨てゲーム」と同じ考え方で「投了」という戦略オプションが会ってもいいと考える。7番勝負の1局目であれば,敢えて手の内のカードを全て晒したくないから投了、というのもあり。またずるずる打ち続けて相手に会心の勝利を取られるぐらいなら、という心理的駆け引きがあったかもしてない。

④投了の美学
投了の美学はあっていい。棋道というぐらいで、道がつくのだから、そういう精神的なものも重要と思う。ルールさえ守れば何してもいい、ではなくて「神の一手」も追求していく姿勢は必要。その追求する姿勢が中途半端なのが問題なのであって、投了の美学や日本囲碁界の価値観自体は尊重すべき。むしろ、その神秘性の方が海外ファンには受けそうに思う。


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NM

>海外のタイトル戦は、単純にA新聞が何年記念でいったからY新聞もとか、関係者がタイトル戦にかこつけて海外にいきたいだけで、「海外のファンに目をむけてもらう」というのは名目だけのような気がする。(あくまで、私の個人的見解)また、海外のファンに目を向けてもらうのは、ネットの時代なんだし、もっと色々な情報をWEBで他国語で発信するとかの方が意味があるとおもう。

まぁ本来の理由がなんであれ、タイトル戦が来るというのは海外の囲碁ファンにとって大変貴重な機会であることは間違いありません。毎年フランスで名人戦をやってくれれば「珍しいものが来た→メディアが宣伝する→イゴ?なんだそりゃとクラブに人がおしかけNMの本を買う人が増える(?)」式に囲碁人口は間違いなく増えるでしょう。こちらは、とにかく「ヒカルの碁」以外宣伝が不足しすぎでどうもマニアックなゲームの域をまだ超えておりません。情報の発信もおっしゃるとおり大変重要で、日本棋院はこの点かなり弱いと思います。英語ではかなりの情報がそれほどの時間を置かずに手に入りますが、フランス語ではまだまだ(他の言語では言うに及ばず)です。まぁフランス語のページを作れとは言いませんが、せめて英語ページに棋譜くらい載せられませんかねぇ。著作権の関係が面倒なのかな。
by NM (2005-11-01 07:43) 

ごんた

現地人がいうと説得力あるね。しかし、投了の是非は関係あるのか?どっちかというと、第七局まで期待していたのに4連敗で終わってしまう、とかのほうが問題か。
情報発信については、棋院もっと頑張れ!週刊碁で内輪ネタで自己満足だけではいけない。
by ごんた (2005-11-01 22:52) 

NM

確かに「投了の是非」とまったく関係のないことを書いてしまったので話を戻しますと(汗)こちらにきて感じたのは「投了というのはつくづく日本的な美学だな」ということ。私自身は投了できない碁なんてありえん派、ブッつぶれてもう勝つ可能性がなかったらみっともないから投げなさいと言いたくなる方で、しかもそれが普遍的な価値観だと信じて疑っていなかったのですが、実はこれ例えば中国では違うらしい。で、仮にこちらで番碁を開催して、それが50手で終わってしまったとすると、「日本的だ、素晴らしい(→日本の碁を習ってその美学が染み付いている人)」と言う人と「投げるなんてガッカリ(→現在フランスで一番強い中国出身のプロに影響を受けている若者)」という人に分かれるのではないか、と思います。でもやっぱりダメなときは投げるオプションがないと基本的人権に反するでしょう。違うか。
by NM (2005-11-02 03:33) 

jaman

いや、「ルールで投了を禁止しよう」というのはもちろん冗談で、状況によって投了しなければならない局面はあるでしょう。しかし、日本のプロの碁、とくにタイトル戦の投了図で、ほんとうに投了すべき局面はどのくらいあるのか、と。トッププロは「この局面で投了して、アマ初段のファンはわかるだろうか」「わざわざヨーロッパまで来て、作り碁を投了していいだろうか」というようなことをちゃんと考えているか? これからの時代、そういうことを考えられない人間はダメだ。具体的に、例えば黒番で盤面では勝てそうという碁は、絶対に投了せず作るべきだと思うし、そういう碁を投了したら非難ごうごうでマスコミとファンはふくろだたきにする、といったことをしていかないと、囲碁の普及、囲碁界の発展にはつながらない。
前も言ったかもしれないが、以前王将戦第7局の羽生7冠誕生の一局で、谷川王将はまったく望みのない将棋を、最後誰でも分かる5手詰めの局面にして投げた。あれは本当になかなかできることじゃない。一般に、囲碁界に比べて将棋界には、そういうことを考えている人間が多いという感じがする。囲碁界では、後輩に対する教育が行われていない。Y田前名人に、礼儀をきちんと指導する人間はいるのか。NHK杯不出場問題はどう解決したのか知らないが、本人が(NHKではなく)全ファンに対して謝罪しないかぎり永久追放でかまわん。将棋では、最近K五段が全棋戦半年間の出場停止になった。理由は、対局で遅刻・不戦敗が多いためだという。もちろん、すべて予選であって、ファンにはべつに迷惑をかけたわけではない。
なお、上の理由の③について、ほんとうにそういう発想の人もいると思います。例えば全盛期の趙治勲や現在の羽生。でも、それもやっぱりダメだと思います。みんな言ってるけど、日本シリーズ第2戦・第3戦でJFKを出すべきだった。負けたから言うわけじゃなくて、それがお金を払って見に来ている人に対する筋だ。
by jaman (2005-11-02 08:56) 

jaman

連続カキコ失礼。
投了は日本人の美学だ(?)なんて考え方がいつ生まれたのか知らないが、江戸時代の碁は投了が意外に少ない。それは、御城碁の場合、棋力の低い将軍様や御家人たちにお目にかける、という要素があるためだ。御城将棋の場合は特に顕著で、飛車角損のとんでもないブッ大差の将棋でも、きちんと詰む局面まで指した。また、普通の碁(例えば秀策・雄蔵の碁)でも、必ず主催者がいて、主催者の家で観戦者がいて、料理もいただいて対局しているわけなので、やはり早い投了は少ない。そのかわり時間切れによる打ち掛けが多いのですが。
もしかして「美学」なんてものは、戦後タイトル戦形式になって、プロに「ファンのために打っている」「観戦者を楽しませてお金をいただいている」という意識が希薄になって生まれたものではないでしょうか。
by jaman (2005-11-02 09:12) 

ごんた

ご指摘の通り礼儀がなってなかったり、中途半端な行為を美学と勘違いしてそうな輩も多い。これは本人がこれまで囲碁一筋だったために社会人としての常識がないことや、周りにろくでもない太鼓持ちが沢山いるから、余計勘違いが進行してしまうのではないか?と想像します。阪神の井川もまさにそんな感じ。

美学を盾に、あまりファンのことを考えずに投了してしまうプロ(しかもトッププロ)が一部いるのは事実でしょう。でも、例えば女子ゴルフの不動のように人気では藍ちゃんやさくらちゃんに負けても実力では負けない、的な硬派もいる。ファンサービスを常に心がけるのはプロとして当然のことかもしれないけど、そういうサービスではなくて、結果で示す、みたいな硬派なプロがいてもいい。硬派なプロが自分の信念を曲げてまで打ち続けられないから投了する、という権利を認めるべき、というのが私の主張です。また、ファンサービスをきちんとできるプロと、人生も含めぐだぐだだけどタイトル戦だけ頑張るF沢S行みたいなキャラができていて、それがファンに認知されていれば、それはそれでありと思う。
by ごんた (2005-11-02 23:13) 

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